脊椎側彎症(せきついそくわんしょう、scoliosis )は、女児に特に多くみられる、脊椎が横(側彎、そくわん)に歪曲する病気で8割が原因不明とされています。
側彎することで身体に歪みが生じるため、見かけが悪くなったり関節痛を引き起こしたり、内臓や肺を圧迫したり様々な症状や障害が併発されるとも言われています。
しかし適切な治療を受ければそう恐れるものではありません。
脊椎側彎症についてまとめました。
英国のユージェニー王女のウェディングドレス
こんなニュースを目にしました。
英ロンドン郊外のウィンザー城で12日、ユージェニー王女とジャック・ブルックスバンク氏の結婚式が行われた。ひときわ目を引いたのは、ピーター・ピロット氏とクリストファー・ドゥ・ヴォス氏のデザインによるウェディングドレスだった。
ドレスは袖の長いアイボリーガウンで、流れるような裾をあしらい、大きく開いた背中には12歳の時に受けた手術の痕があらわになっていた。
ユージェニー王女は英ITVテレビで同日放送されたインタビューで、「美のあり方は変えることができるし、傷痕を見せても問題ない。そのために立ち上がるのは本当に特別なことだと思う」と述べ、ドレスのデザインについてほのめかしていた。
祖母のエリザベス女王から借りたティアラを被り、ベールは被らなかったのも背中の傷を隠さないためだったのでしょう。
Princess Eugenie's dress had been designed to show the scar from her scoliosis treatment as a child.
— PA Images (@PAImages) 2018年10月12日
"I think you can change the way beauty is, and you can show people your scars and I think it's really special to stand up for that." she said#RoyalWedding pic.twitter.com/uHhkyxpM6H
ロイヤルウェディングの素敵な写真を拝みたい方はガーディアンのこちらの特集をどうぞ。
私も元脊椎側彎症の患者なのでユージェニー王女のウェディングドレスと言葉に感動し勇気づけられました。
ユージェニー英王女、「傷跡を見せるウェディングドレスが着たかった」 - BBCニュース
脊椎側彎症とは
脊椎側彎症(せきついそくわんしょう、scoliosis)とは、背骨(脊椎)が側方に彎曲する病気です。
その8割は突発性、即ち原因不明とされており、多くが成長期に発症するので早期検診が重要になります。
原因不明だと「遺伝病だ」「親が」と世間は偏見を持つかもしれませんが、私と全く同じ遺伝子を持って同日に400グラム近く低体重に生まれ、中学まで同じ環境にいた妹が全く発症せず、真っ直ぐな背骨だと言うことをここに記しておきます。
以下は信頼のできてかつわかりやすい情報ソースです。
東京医科大学による脊椎側彎症のQ&Aページ。
アメリカのScoliosisというサイトの日本語訳のページです。側弯症について生活や対人関係も含む総合的な事がわかりやすく書かれています。男性の患者にもお勧め。
Languages | Scoliosis Research Society
サイト名は英語ですが、最新の臨床や研究に基づく日本語サイトです。
診断から治療など知りたい情報がたくさん掲載されています。
側弯症は、どんな病気か?|側弯症TOWN(患者向けサイト)|日本側彎症学会
日本側彎症学会による患者向けサイト。
「小児の脊柱側弯症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
家庭で子供の側彎症を調べる方法なども紹介しています。
story.2 私の人生を決めた側弯症 | 認定NPO法人日本脊柱変形協会(JSDI)
私の脊椎側彎症の体験記
私は中程度(38度)の脊椎の側彎がある(胸椎型、thoratic curve)と診断され、コルセットを装用し、19度程度まで改善しました。
重度(40度以上)になると手術が必要と言われていて、王女の傷は12歳の時の手術のための傷です。
発症と診断は中学二年生の時
私は中学二年生(13歳)の時に学校の定期検診で脊椎側彎症の疑いがある、と診断されました。
市内の病院では対応できないということで、県内の養護学校に隣接する公立の医療療育センターで正式に診断を受けました。
それからは治療のための矯正用コルセットの作成と定期診断のために両親は仕事を、私は中学校を早退して通院しました。
当時の私は第二次性徴で胸のふくらみが恥ずかしく猫背気味で大きめの運動着を着たり、思春期というか反抗期で授業中も上半身を机の上に寝そべるような姿勢をしたりしていました。
それが単純な原因かは知る由もありませんが、発症してからというものは後悔です。
同じ遺伝子を持った同い年の妹は胸も大して膨らまず(同じ遺伝子なのに!)、反抗期でも無かったし剣道をしていたので常に背筋がピンと伸びていて、側彎症を発症しませんでした。
因果関係は不明ですが、罹患してからは後悔や自責の念があります。
コルセットの作成と装用、学校生活
コルセットは確か32万円くらいだったと記憶しています。
そのうちの結構な額が市役所に申請することで後日還付されていました。
作成は県庁所在地のより大きなセンターからやって来たプロの大人二人が医療療育センターで父親立会いのもと行いました。
石膏で型取りをするのですが、今思えば母親に立ち会ってもらいたかったです。
当時は両親が共働きで父母が交代制で通院していて、たまたま父親だったので仕方ないですが。
裸では無いけど下着無しのピッタリとした薄着で型を取られるのは、向こうもプロだけどやっぱりちょっと恥ずかしかったです。
今なら世間話しながら余裕でしょうけど。
胸から腰、おしりにかけての自分の胸像を後日見た時は我ながらミロのビーナスというかきれいな体だな、と思いましたね。
程よい大きさの綺麗なおわん型の胸とくびれた腰で。
母親は父が「母が立ち会った方がいいのでは」と言ったのを却下した張本人なのでしたが、やっと理解したのかちょっとばつの悪そうな申し訳なさそうな感じでした。
ミロのビーナス、成熟した女性のイメージですが実際は十代前半だったと想像しています。
出来上がったビーナス像を基に、プロの方が矯正用コルセットを作ってくれました。
コルセットといってもウエストを細く綺麗に見せるために付ける女性用の補正下着のようなものでは無くて、硬いプラスチックや金属で出来た甲冑みたいなものです。
重くは無いけど硬いです。
側彎症手術日記(`・д・) から借用
私はベルト部分をマジックで色を付けたり自分流に修飾していました。
定期検診で色の付いたコルセットを見てお医者さんは怒るどころか笑っていましたε-(´∀`*)ホッ。
私のコルセットは左側に脇を置くような支柱ともっと圧迫するためのパッドと甲冑がついていて戦闘力が高そうな感じでした。
コルセットは胸の部分は硬い覆いが無いのでちょっとエッチなコスプレ女戦士みたいだし、当の本人は「ザリガニとか海老みたいな外骨格を持った生物の気持ちがわかるな、えへへ」という感じでした。
基本これを24時間、お風呂と部活動(運動部でした)の時以外はずっと装用しているわけです。
体育の時も外すべきなんですが、ある程度のコツを覚えると取り外しが面倒くさいので付けたまま体育に参加することが多かったです。
私は当日から取り外しは自分でやっていました。
本当は効果が百パーセントになるように親がするのがいいとは言われていますが、やっぱ恥ずかしいし、側彎症との付き合いも長くなると「要は出っ張ってる所を押し真っ直ぐにするんだからそれに合うように装用すればいいんでしょ」となんとなくコツがわかってきました。
最初は腰の骨をピッタリ付けて固定してから上を矯正効果が出るように締めていくといいと思います。
中学校生活
中学校生活でいじめられるとかバカにされるということもありませんでした。
隠れ外骨格生物種として体当たりしてびっくりさせることぐらいはしたかもしれませんが。
自転車も最初は不慣れだったけど普通に乗っていました。
運動部も(医師の許可あり)気にせず続けていました。
コルセットを持ち運ぶ時は自分のジャージをマネキンに洋服を着せるみたいに着せて持ち歩いていたので、たまにびっくりされました。
夏場に蒸れるのは辛かったけど、それ以外は生活の一部という感じでした。
医療センターには定期検診で通い、経過観察をしたり検診結果に応じてコルセットを微調整してもらったりしていました。
最初は通院を嫌がっていたものの、最後の検診の日は寂しく思いました。
高校生活、大学生活、その後。
高校一年生くらいまではコルセットは毎日装用していたと思います。
コルセットを装用するために制服は大きめのものを着ていました。
大学生になると全くコルセットを装用することは無くなり(骨も固まっているので付けても意味が無い)、自分が側彎症だったこともすっかり忘れていました。
大学の定期健康診断では、「姿勢を良くして過ごしましょうね」と言われたり言われなかったり。
それと就職活動用の証明写真をプロにとってもらう時に「少しだけ右肩上がりだから背筋真っ直ぐ伸ばしてね」とカメラマンに指示された時に思い出したくらいです。
あと妹氏は胴体が綺麗(くびれていてスタイルがいい)なのはコルセットを作るおじさんが、思春期の娘が毎日甲冑を着るなんて可哀想だら、補正下着の要領で若干ウェストを細くして将来美しくなるようにしてくれたおかげだから感謝しなさい、と冗談で言っています。
あの時のおじさんとアシスタント見習いのお兄さんありがとう!
ウサイン・ボルトが与えた希望
100m、200m、400mリレーで3冠を果たした世界最速の男、ボルト選手だが、そのひときわ目立つ大きな体躯に、実はある疾患を抱えている。それは「脊柱側弯症」である。
統計によると、人口の約2~3%が側弯症を抱えているといわれている。アメリカでは600万~900万人、日本では240万~360万人がこの疾患を抱えている計算だ。
側弯症は早期発見すれば、決して怖い疾患ではない。今回、そのことをボルト選手が証明してくれた。彼の3種目3巻制覇という偉業を果たした側弯の超人は、世界人口74億人のうち最大2, 220万人と推測される側弯症患者にとっても希望の星である。
アスリートには致命的とも思える側彎症のハンディキャップを乗り越えて世界圧巻のパフォーマンスをしたウサイン・ボルト。
超人的な身体能力や筋力、トレーニングによるカバーで世界一に輝く姿は希望を与えました。
ボルトも受けたというカイロプラクティックは日本では慰安的マッサージというか民間療法、気休め程度な位置付けですが、アメリカではプライマリー、第一義的医療だそうです。
私も高校生の時に自室でこういうエクササイズをしていました。
最後に
側彎症の学童へ
いきなりの診断結果にびっくりしているだろうけど、通院して現在の治療法に従えばちゃんと普通程度に直って、進学や職業、対人関係や恋愛、妊娠・出産でも普通の人生を送ることができます、心配しないで。
「年を取ると身体の歪みが全身に行き渡って全身が関節痛になる」とか脅すような情報もネットには溢れていますが、私は今のところそんな気配は全くありません。
姿勢を正しくすることやストレッチ運動を心掛けて健康に暮らしています。
側彎症の子供を持つ親御さんへ
子供のためにも適切な治療を早め早めに受けさせてあげて下さい。
それと治療中や後、公共の場、特に温泉や銭湯など裸になる場所や薄着の季節に大声で「やっぱり曲がってる!」と言って背骨をなぞったりするのは止めて下さい。
思い出話ならせめて家の中でして欲しい。あれ本当に腹立たしいです。
治療に協力してくれた恩が一瞬で忘れる位の威力があります。
「普通にしていれば他人にはわからない過去」をほじくり返して公然と侮辱するのは誰でもムカつくもんはムカつくんですわ。
背骨をなぞんなきゃわかんないなら最初からしないでほしい。
それとコルセットは成長が止まった後は付けても意味が無いのに大人になっても高かったんだから付けろとか意味不明なことを言わないで欲しいですわ。
側彎症は進行すると内臓や呼吸器官を圧迫したり手足の長さを左右変えたり重症化するそうなので早め早めの発見と適切な治療が受けられることを望みます。
いつか病因が解明されるといいな。